こすぎ法務ジャーナル No.8

2012年5月18日 発行

ワンポイントアドバイス

スティーブ・ジョブズを遠く離れて

少し前になりますが,中国でアップルコンピュータが「iPad」の商標権について敗訴したというニュースがあったのを覚えておられるでしょうか。
報道されているところによりますと,中国のある企業が中国における「iPad」の商標権を有していると主張し,本家本元であるアップルが負けてしまったということのようです(商標権の有無というよりも,商標譲渡契約の解釈の問題が主な争点だったようですが)。本件については,その後,中国における商標権を有しているとされた会社が破産申立てをされるなど,紛争は複雑化しているようです。

この「商標」,企業活動の中で意外と関わる機会が多いのではないでしょうか。同じ知的財産法の一部である特許権については,紛争になる会社の業種は限られているのですが,商標は,会社の業種にかかわらず問題になります。

商標について簡単なイメージを持っていただけるよう,今回は,「商標権を保有しているとどんなことができるのか」について,ご説明したいと思います。

1. 権利を独占できる

自分で作り出したブランド名だから…といっても商標登録をしていなければ,独占できません。商標として登録が認められて初めて,独占権を主張できます。ナンバーワンにならなくてもいいけど,オンリーワンになるには商標が必要なのです。
なお,注意していただきたいのは,商標権は,指定商品・指定役務について認められるものであること,つまり,あらかじめ決められた商品やサービスの分野に関して独占権が与えられるものであるということです。

2. 侵害された場合にさまざまな法的措置がとれる

独占的効力がありますので,他人が権利者の独占的使用を侵害したり侵害するおそれがあるときは,その侵害の停止又は予防を請求することができます。
例えば,商標権侵害行為によって,損害を被ってしまった場合には,損害賠償請求ができます。また,損害が発生した後の事後的な対応にとどまらず,将来の侵害を防ぐべく,侵害行為の差止めを請求することもできます。
さらに信用回復請求といって,業務上の信用を回復するのに必要な措置(例えば新聞への謝罪広告の掲載)を命ずるよう求めることもできます。


いかがでしょうか。同じように自分で考えた社名等を使って商売をしてきたとしても,商標権を有しているか(登録しているか)否かで,相当の差がでてしまうことがあるのです。
もちろん,実際には,どのような行為が侵害にあたるのかという問題や先使用権の有無といった種々の問題があるわけですが,いずれにせよ,現代では,商標登録のことを考えずに商売をやっていくのは危険といってよいでしょう。
特に,中国における商標の重要性は顕著です。日本では,そっくりそのまま同じ商標が使われることはあまりありませんが,中国では完全コピーされることが多く,本家の商売に与える打撃も大きくなります。また,中国では「先使用権」がなく,先に他社に商標登録されてしまうと,先に使用している会社でも原則としてその商標を使うことができなくなってしまうのです。
最近,中国ではアメリカ帰りの弁護士・弁理士が知的財産分野で訴訟を積極的に起こしているとの噂もあります。シリコンバレーから遠く離れた中国での紛争を,スティーブ・ジョブズはどのように見ているのでしょうか。


編集後記

チャンピオンズリーグ決勝が迫ってきました(本稿が発行されるときには結果が出ているはずです)。今年は,大方の予想を裏切って,スペイン2強が準決勝で敗退してしまいましたけれども,バイエルンとチェルシーはどちらも戦力の整ったビッグクラブですし,好ゲームになりそうです。こういう大会は準決勝が一番おもしろい,なんていう意見も耳にしますが,ことチャンピオンズリーグに関しては「イスタンブールの奇跡」「カンプ・ノウの奇跡」といったドラマチックな決勝戦もありました(ACミランとバイエルンのファンの方ごめんなさい)。
私の予想としては2-0でチェルシー勝利ですが,何はともあれ,ビッグイヤーの行く末を見届けたいと思います!目の覚めるようなルティーナデイスプレイで…(石坂)

こすぎ法律事務所

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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