こすぎ法務ジャーナル No.7

2012年4月9日 発行

ワンポイントアドバイス

新入社員の能力や適性を検討するための期間として、多くの企業が就業規則において「試用期間」を設けています。この試用期間中に、新入社員が適性を欠くことが明らかになったので本採用を拒否したいと考えた場合、企業としてはどのような対応をすべきでしょうか。本号では試用期間に関する裁判例を検討します。


試用期間後に本採用を拒否することが認められるためには?

1. 本採用を拒否できるか否かの判断基準

試用期間が終了し、その時点で「適性を欠くから」と言って簡単に本採用が拒否できるわけではありません。
法律上は、解雇する場合と同様に「本採用拒否について客観的に合理的理由が存在し、社会通念上是認される場合にのみ認められる」というのが最高裁判所の立場です。
したがって、解雇する場合と同様に、本採用を拒否する場合には企業側は慎重に対応しなければ、後に裁判所によって無効と判断されてしまうリスクがあります。
もっとも、普通解雇をする場合よりは、本採用拒否は比較的広く認められるというのが裁判例の傾向です。

2. 本採用を拒否することが認められる場合

試用期間中に発覚する新入社員の問題行動としては、主に「出勤不良」と「能力不足」が挙げられます。

新入社員の出勤不良を理由として本採用拒否が認められた裁判例

就業規則において「試用期間中の出勤率が90%以下、もしくは、3日以上無断欠勤した場合は、本採用しない」と規定されている企業において、試用期間中の出勤率が84%程度で、欠勤が8日間(うち、3日間は欠勤理由不明)という新入社員の本採用を拒否した、という事案において、裁判所は本採用拒否を有効と判断しました(日本コンクリート事件・津地裁昭和46年5月11日決定)。上記のような就業規則の定めは、一般的に厳しいようにも思われますが、この判決では特に問題とされていません。

能力不足を理由として本採用拒否が認められた裁判例

指導担当の先輩社員がマニュアルを作成して仕事内容をひと通り教育したにもかかわらず、新入社員がミスを連発し、当初の見習い期間3ヶ月間終了後に、さらに見習い期間を2ヶ月間延長したものの、延長した2ヶ月間の間でさらにミスを34件起こした新入社員について、本採用を拒否したという事案で、裁判所は本採用の拒否を有効と判断しました(三井倉庫事件・東京地裁平成13年7月12日判決)。
この件では、新入社員のミスには重大なものも含まれていたということですが、それに加えて、企業側がマニュアルを用意して指導したにもかかわらずミスが改善されなかった、という事情が重視されているようです。

企業の取るべき措置

以上の裁判例を概観すると、試用期間後に本採用を拒否したことが無効とされないためには、

  1. 本採用のための要件を就業規則等でしっかりと定めておき新入社員に周知・徹底しておくこと、
  2. 新入社員が業務上のミスをした場合はその都度指導し記録に残しておく、

ということが重要です。

3. 試用期間途中の解雇は認められるか?

では、さらに進んで、試用期間途中で解雇することは可能でしょうか。この点については、裁判所は相当厳しい、というのが実情です。
試用期間途中で解雇したことが問題となった裁判例としてニュース証券事件(東京高裁平21年9月15日判決)というものがありますが、この事案において東京高等裁判所は、試用期間中の解雇には、よりいっそう高度の合理性と相当性が求められ、これが認められる場合というのは、社員が業務上横領等の犯罪を行った場合、就業規則に違反する行為を重ねながら反省するところがない場合など、特段の事情が認められる場合に限られる、と判示しました。


このように、試用期間途中での解雇については、通常の場合の解雇よりもむしろ厳しい条件が揃っていなければ認められないとも思われます。
したがって、試用期間中に、社員の適性不足が顕著になったとしても、企業としてはできる限り試用期間ぎりぎりまで指導・教育に努めて、それでも改善の見込がないと判断された場合に、本採用を拒否するという流れで進めるべきです。

編集後記

昨年は大震災の影響もあり新年度が始まるという区切りや高揚感などは皆無でしたが、今年は、新年度の始まりと共に気分も一新して様々な活動に励んでいきたいと思います。今年度もよろしくお願いします。

こすぎ法律事務所

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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