こすぎ法務ジャーナル No.4

2012年1月5日 発行

ワンポイントアドバイス

近年、会社の従業員が、会社から付与された電子メールアドレスを社内もしくは取引先との連絡に利用することは当たり前のように行われていますが、それに伴い、会社から付与された電子メールアドレスを、従業員が私的な連絡をするために利用しているケースも生じています。
そこで、今回は、会社の電子メールの私的利用にまつわる法律問題を解説します。

会社の電子メールの私的利用に関する法律問題

問題点
  1. 従業員が会社の電子メールを私的に利用することは許されるのか。
  2. 従業員が会社の電子メールを私的に利用していることが疑われる場合において、会社は当該従業員に事前に告知すること無くパソコンのデーター等監視・調査することが出来るか。
  3. 従業員が会社の電子メールを頻繁に私的利用していることが発覚した場合に、それを理由として解雇することができるか。

アドバイス
1. 会社の電子メールを私的に利用することは許されるのか。

従業員が会社の電子メールを私的に利用する場合とは、例えば、従業員が会社の電子メールを用いて社内の同僚との間の世間話、同僚の批判やうわさ話といった業務に関係のない会話や、社外の友人との間の業務に関係ない会話等のやり取りを行うことを言います。
従業員が会社の電子メールを私的に利用することについては、私的利用の頻度が一定限度以下の場合は社会通念上許容されるというのが裁判実務上認められている考え方です。最近の裁判例では、一日2,3通程度の私的な利用であれば、社会通念上許容される範囲を超えたとは言えないという裁判例があります。
このように裁判例では、一定限度の私的利用は認められる傾向にあり、また、一定限度がどの程度を指すのか(電子メールの回数など)という点については、裁判例によって評価が分かれるなど曖昧な部分が多々あり明確な基準がないのが現状です。したがって、従業員との間の未然のトラブル防止策としては、社内で、会社の電子メールの利用に関するガイドラインを作成し、その中で私的な使用の禁止に関する規定を予め策定しておくことが肝要です。

2. 従業員が会社の電子メールを私的に利用していることが疑われる場合において、会社は当該従業員に事前に告知すること無く調査することが出来るか。

会社の電子メールを私的に利用したと疑われる従業員に対して、会社がその電子メールのサ ーバーや、パソコンのデーターを従業員に対して事前に告知すること無く調査することは認められるというのが裁判実務上認められている考え方です。
もっとも、無制限に認められるわけではなく、調査の必要性がない場合(例えばもっぱら個人的な好奇心などから調査した場合)や、従業員に事前に告知すること無く継続的に長期間監視・調査したような場合には、従業員のプライバシー権の侵害となりうる場合もありますので注意が必要です。
調査の方法についても、社内の電子メールに関する規定の中に定めておくことが後の紛争を予防するために有用です。

3. 従業員が会社の電子メールを私的に利用していることが発覚した場合に、それを理由として解雇することができるか。

電子メールの私的利用のみを理由に解雇をするというケースはほとんど見られないですが、解雇理由の1つとして会社側が持ち出すケースは裁判例上も多々見受けられます。
この点について参考となる裁判例としてトラストシステム事件(東京地方裁判所平成19年6月22日判決)があります。この事件は、従業員の能力の欠如及び電子メールの私的利用を理由として会社が従業員を解雇し、その解雇の効力が後に争われたというものです。
この事件において、解雇された従業員は、約6ヶ月間の間に1700件ものメールの私的利用(月平均283回、仮に一月22日稼働するとして、1日あたり13回もの私的利用。メールの内容は、プロ野球の話題や、就業時間後の飲みの誘い、休日の過し方など。)をしていたというケースなのですが、それでも、裁判所は電子メールの私的利用に関する従業員の行為をもって解雇することは認められないという判断をしました。 この事件において、解雇が認められなかった大きな考慮要素は、会社が従業員の電子メールの私的利用について、それが発覚した当時会社が全く問題視していなかったという点が上げられています。
したがって、会社としては、私的使用が発覚した段階で、すぐに従業員に対し注意をするとか、始末書をとるといった措置を施しておくことが重要です。それでもなお私的利用が改められなかった場合に、懲戒処分や、程度によっては解雇という手段も可能になるものと思われます。

編集後記

今年のお正月は、暴れん坊盛りの2歳になる子どもの世話と、来月出産を迎える身重の妻の世話で、慌ただしくも楽しい正月でした。今年1年、仕事もそのような感じで慌ただしくも楽しく頑張っていきたいと思います。

こすぎ法律事務所

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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