こすぎ法務ジャーナル No.16

2013年2月13日 発行

退職勧奨の限界

当社内で問題のある社員が現れてしまった場合に、その社員を会社側から一方的に解雇をしてしまうと、社員は会社の措置に不満を持ち、その後の解雇無効訴訟を引き起こすなどのリスクを伴います。
そこで、会社側としては、解雇をするのではなく、できる限り社員に退職の働きかけを行い、社員を説得して、合意して退職してもらう形にすることが重要です。
しかし、会社側からの退職の働きかけが度を過ぎてしまうと、後々争いを引き起こしてしまいます。そこで、今回は「退職勧奨」がどこまで許されるか、いわゆる退職勧奨の限界について解説します。

誰でも退職勧奨をしてよいか

例えば、業務ミスを繰り返すような社員がいた場合に、そのような社員に対して退職勧奨を行い、退職を促すことは許されるでしょうか。
これは、退職勧奨の対象者の問題です。
退職勧奨というものは、あくまでも会社側から従業員に対して自発的に退職を促すものであって、従業員はこれに従わなければならないものでもありません。したがって、業務ミスの多い社員に対して退職勧奨を行うことは特段問題にはなりません。

退職勧奨の際に問題となる言動・気をつけなければならない言動

退職勧奨とは、先ほど述べたとおり、あくまでも従業員に対して自発的に退職を促すものですので、退職勧奨の際に会社側に行き過ぎた言動があると、後々従業員から「無理やり退職させられた」などといって退職の無効を主張されたり、慰謝料を請求されるリスクがあります。
実際に会社側が裁判所から「退職勧奨が違法である」として、慰謝料の支払いを命じられたケースには以下のようなものがあります。

全日本空輸事件(大阪地方裁判所平成11・10・18判決)

傷病休職から復職しようとした客室乗務員に対して、会社が退職勧奨を行ったというケースです。このケースでは、会社側は、約4ヶ月に渡って30回以上当該に面談し、退職を促していました。また、面談の時間も約8時間に及ぶ長時間の面談もあったということです。面談の際には、会社の担当者が「CAとしての能力がない」、「別の道があるだろう」「寄生虫みたいだ」などという発言をしています。さらに、会社の担当者が、当該社員の居住する寮まで出向いて面談したり、当該社員の兄や両親にまで直接会って退職するよう説得を要請する、といったことまでしています。
 このケースでは、裁判所は、退職勧奨は違法である、として会社に50万円の慰謝料の支払いを命じています。

下関商業高校事件(最高裁判所昭和55・7・10判決)

このケースでは、雇用主側から退職を求めたものの、従業員がこれを拒否したため、その後、雇用主側が約2ヶ月間で10回と頻繁に面談を行い、退職勧奨をしたこと、面談時間は短い時で20分、長い時で1時間30分に及んでいたこと、「退職するまで続ける」などと雇用主側が発言したことが問題視され、裁判所から雇用主に対して、慰謝料の支払いが命じられました。


ポイント

退職勧奨が違法となるかどうかという判断においては、
・面談の回数
・面談時間
・侮辱的・威圧的発言の有無
といった要素が重視されています。これらの要素を念頭において、会社から強制的に退職に追い込もうとした、と言われないよう気をつけて行うべきです。


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今月の格言

地上のあらゆる所有の中で、自分のハートが最も貴重なものである(ゲーテ「フランクフルト学者報知」)

編集後記

武蔵小杉駅の駅ビルがいよいよ完成間近の状況となっています。駅ビル入居するテナントもすべて明らかになり、期待は膨らむ一方です。新たなステージへと向かう武蔵小杉駅にあやかって、我々も今年は新たな取組に挑んでいきたいと思います。

こすぎ法律事務所

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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