こすぎ法務ジャーナル No.14

2012年11月19日 発行

ワンポイントアドバイス

早期退職優遇制度

モデルケース

電気製品の製造販売を主力業務とするパナカハラック㈱は,最近の不況で業績が悪化し,人員削減が急務となった。そこで,パナカハラック㈱では,①40歳以上で②勤続年数15年以上の従業員が退職を希望した際には,一定の算定基準に従って割増退職金を支払うという早期退職優遇制度を導入した。


早期退職制度について

本件で導入されたのは,いわゆる早期退職制度と呼ばれる制度です。この制度を導入する会社も最近よく見られますね。昨今の不況下で,どの会社もコスト(人件費)の削減は大きな問題となっていますので,退職金を上積みしてでも辞めてもらった方が,結局は会社の利益になるということでしょう。

希望したら誰でも退職できることになるのですか?

早期退職制度と言っても内容は様々です。「誰でも申し込めば辞職できて,割増退職金も払います」というような制度も可能ですが,そのようなことでは,会社にとって必要な人材も辞めてしまい,会社自体が危うくなってしまいます。だいたい,会社にとって辞めてほしくない人=能力のある人,ですからね。会社に貢献していないけれども給料が高い従業員に辞めてほしいというのが本音なわけです。
そこで,早期退職優遇制度を導入する場合には,①使用できる労働者に条件を付け(年齢,勤続年数,職種など),対象者を絞る②会社が承認した労働者に適用を限定する,というような内容にするのが通常です。
法的に重要なポイントは,従業員の申出はあくまで「申込み」で,会社が承認して初めて「合意」が成立するという形になっていることです。

不公平だとして違法になることはないのですか?

早期退職制度の利用について,最終的に会社が承認するかしないかで決められるということになると,年齢などの条件が変わらないのにも関わらず,ある従業員は承認されて割増退職金が支払われるが,他の従業員は承認されないということがあり得ます。
これは一見不平等に見えますが,そもそも早期退職優遇制度は,恩恵的なものであって,会社の承認が必要としても労働者に不利益になるわけではないこと,優秀な人材の流出を防ぐために必要であること,等の理由から,違法ではないとされています。
これが違法だとすると,早期退職優遇制度なんか怖くて導入できませんから,当然の結論といえるかもしれません。

ただ,規定は合法だとしても,例えば,ほとんど同じ条件の従業員100人が応募して,1人だけ承認されなかった,というような場合はどうでしょうか。何で俺だけ!?となって,「会社の運用が恣意的で著しく不公平・不平等だ。だから会社の不承認は違法だ。割増退職金を支払え。」という請求がなされるかもしれません。これは,会社は,早期退職を承認するかどうかを決める裁量があるが,裁量権にも限界があり,不合理な理由によって承認しなかった場合は,裁量権の濫用として違法となる(つまり早期退職優遇制度の適用が認められる),という考え方です。

このような請求も成り立たないとは断定できないのですが,割増退職金は「早期の退職の代償として特別の利益を付与するものである」として,承認の得られなかった従業員は,一般の自己都合による退職の申出をすることができるから,退職の自由を制限されるものではない,とされていること(最判平成19年1月28日)からしますと,会社の裁量は非常に広いと考えるべきでしょう。裁量権の濫用が認められるとしても,相当極端な場合に限られるものと思われます。


まとめ

早期退職優遇制度については,今のところ,比較的規模の大きい会社が導入することが多いようですが,中小規模の会社でも人件費削減に役立つと思われます。

  • 会社側 : 導入するのであれば,必ず会社承認制にして,規定を整備しておく
  • 従業員側 : 会社に承認してもらえない場合,基本的に制度の利用はできない
    →面談の際に,会社(上司)を説得するしかない

編集後記

急に寒くなってきましたね。季節の変わり目は風邪をひきやすいと言いますが,今年も早速風邪をひいてしまいました。弁護士になる前はほとんど風邪をひかなかったのですが,やはり不規則な生活がよくないのでしょうか…何はともあれ,体調管理も能力のうちですので,注意していきたいと思います。

こすぎ法律事務所

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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