こすぎ法務ジャーナル No.12

2012年9月19日 発行

の法律相談

有責配偶者からの離婚請求の許否の基準

1.

ご存じかもしれませんが、互いの協議がまとまらない場合の裁判離婚において、法律上、離婚が認められるかどうか(裁判所が離婚を認めてくれるかどうか)は、法定の離婚原因(民法770条第1項各号)があるかどうかによります。すなわち、法律に定められた理由に当てはまらなければ、一方がどんなに強く離婚を望んでいても、裁判所は離婚を認めてくれません。

念のために、法定の離婚原因を挙げておくと、

  • ①配偶者に不貞な行為があったとき、
  • ②配偶者から悪意で遺棄されたとき、
  • ③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき、
  • ④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき、
  • ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、

以上の5つです。

また、これもご存じの方が多いかもしれませんが、有責配偶者といって、婚姻関係破綻の原因を自ら作った配偶者(例えば不貞行為をした等)からの離婚請求は、容易には認められません。

「容易には」と言ったからには、例外があるわけで、最高裁判所(最大判昭62・9・2)は、その例外の判断基準について、

  • ⅰ夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるかどうか、
  • ⅱその問に未成熟の子が存在するかどうか、
  • ⅲ相手方配偶者が離婚により精神的・経済的にきわめて苛酷な状態に置かれる等の離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存するかどうか

等の諸点を総合的に考慮して決する、としています。

ただし、最高裁判所の基準があるからといって、容易に判断できるというわけではありません。上記基準は「等の諸点を総合的に考慮」と言っていますから、ⅰ~ ⅲのどの点が重要視されるのか、それ以外の事情はどの程度考慮されるのか明確ではありませんし、実際にはどのような場合にⅰ~ⅲにあたると言えるのかの判断も困難です。


2.

実際、第1審と高裁とで判断が分かれるケースもあります。高松高裁平成22・11・26判決は、重度の障害を負う成人の子がいる夫婦問で、不貞行為をした夫から離婚請求がなされた事案ですが、第1審が離婚を認めたのに対し、高裁は、離婚を認めないとの判決を下しました。
高裁が離婚を否定した理由は、上記のⅰ~ⅲに照らして言うと、概ね以下のようなことです。

  • 別居期間7年は、夫婦の年齢(ともに52歳)や同居期間(19年)と比較してそれほど長くない
  • 24時間介護が必要な重度障害の長女は、未成熟子又はこれに準じるもの
  • 夫は(医師で医療法人経営者)、離婚後も、妻と子の住居の確保と、医療面での配慮及び数十万円の生活費の援助を申し出ているものの、子の介護をしている妻の母が高齢で、近い将来介護がより困難になり、介護費の増大も多分に想定される
  • 上記夫の申し出が信用できたとしても、永続的な保障手段は講じられていないので、妻が経済的に過酷な状況に置かれる可能性がある
  • 夫は再婚を考えており、妻においては、夫の再婚後は、夫に援助を求めることが困難になるかもしれず、長女の介護の負担を一人で抱え込むなど精神的に過酷な状況に置かれる可能性がある

皆さんは、この判断をどう感じられるでしょうか。
夫は、妻に対して、かなりの生活費の援助等を約束していたようですが、それでも裁判所は、有責配偶者である夫からの離婚を認めませんでした。
やはり婚姻関係というのは、重大な身分関係であり、離婚後に、離婚に責任のない一方(本件では妻)が不利益を受けることに対しては、たとえ「可能性がある」という不確定なものであっても、かなり慎重に判断していると言えるのではないでしょうか。
ちなみに、第1審は離婚を認めていますが、2つの裁判所が認定した事実関係はほぼ同ーであり、同じ事実関係でも裁判所の判断が分かれたということです。


離婚という身分関係の法律問題でも、上記裁判例のように、事実認定や法的判断が困難を極めるケースは多くありますので、そのような場面に遭遇した場合は、まずは弁護士などの専門家にご相談いただくことが重要かと思います。

編集後記

夏も終わりを迎え、自宅のベランダではカボチャとトウモロコシが収穫間際となっています。2つとも、本来は初夏~7月頃が収穫期の野菜ですが、植えた時期が遅く、今頃までかかりました。
時期を外したせいか、実は小さく、満足いく内容ではありません。後悔しても、再チャレンジは翌年。季節や天候に左右される、このもどかしさ、奥深さが園芸の醍醐味でしょうか。

こすぎ法律事務所

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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