こすぎ法務ジャーナル No.1

2011年10月7日 発行

ワンポイントアドバイス

2011年は、大地震や大型台風などの大天災に見舞われた年でした。そこで、天災に関連してある企業の担当者から寄せられた相談の一例をここでご紹介します。

大震災、大型台風等の天災が起こった日に、従業員の安全に配慮して、帰宅させずに会社内に強制的に宿泊させることの可否

質問

3月11日の震災当日、従業員の安全に配慮して従業員を帰宅させずに会社に宿泊させました。今後も、もし大震災や大型台風が来た場合に同様のことが起こる可能性があります。
(1)しかし、そもそも、会社はたとえ従業員の安全のためであっても「従業員を帰宅させない。」という強制力を有しているのでしょうか。
(2)また、このような場合の勤務、賃金の取り扱い、すなわち、会社に強制宿泊させた時間分の賃金を支払わなければならないのでしょうか。

アドバイス

(1)会社は、終業時間後に従業員を帰宅させずに会社に宿泊させるという強制力は有していません。終業時間後の従業員の行動は自由ですので、たとえ大震災、大型台風の影響により従業員の安全な帰宅が確保できない状況であっても、帰宅を希望する従業員を引き止めて強制的に会社に宿泊させることはできません。
なお、労働契約法5条により会社には従業員の生命・身体に対する安全配慮義務がありますが、終業時間後の労働者の行動は自由ですので、この安全配慮義務をもって終業時間後の従業員の行動を強制させるだけの根拠にはなりません。
(2)仮に従業員が帰宅せずに会社に宿泊したとしても、そこで何か仕事をしたという事情がない限りは、労務の提供はないので、その時間分の賃金を支払う必要はありません。
【参照:労働契約法第5条】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。


の法律相談

このコーナーでは、日常生活で直面する可能性がある法律問題について簡単に解説します。今回は、交通事故を巡る法律問題について解説します。

ひき逃げ事故に遭い、犯人が不明の場合の補償

質問

ひき逃げ事故に遭ってしまい怪我をしてしまいました。しかし、犯人がまだ捕まっていません。ケガの治療費などは誰から補償を受けたらよいのでしょうか。

アドバイス

ひき逃げ事故で、なおかつ、犯人がわからない場合、被害者の方自身が加入されている自動車保険で「人身傷害補償保険」に加入されていれば、この保険から補償を受けることができます。また、「無保険車傷害保険」に加入されていた場合には、死亡又は後遺障害の損害について補償を受けることができます。
しかし、被害者の方がこれらの保険に加入していない場合、又はこれらの保険に加入していても特約(例えば歩行中の事故は除くといった特約がある場合)により保険対象とならなかった場合は、これらの方法による補償は受けられません。しかし、このような場合であっても、「政府保障事業」というものに請求することができます。
この「政府保障事業」というものは、加害者が無保険で自賠責保険にも加入していなかった場合や、今回のようにひき逃げ事故で加害者が見つからなかった場合に、政府が被害者救済の実をあげる目的で創設した制度です。
詳しくは、国土交通相のホームページ(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/accident/nopolicyholder.html)に説明があります。保険金の限度額などは自賠責保険から補償を受ける場合とほとんど同じです。
もっとも、この保障事業による請求の場合には、賠償責任者や事故状況等の事実関係の調査に時間を要することが多く、請求してから実際に補償金額が支払われるまでに1年近くかかることも多いのが難点です。また、健康保険や労災保険などの社会保険からの補償が受けられる場合には、その金額は差し引いててん補される点が自賠責保険と異なります。


あとがき

微力ながらこのようなニュースレターを作ってみました。今後は、さらに内容を充実させていきたいと思っています。不明点などあればお気軽にお電話下さい。

弁護士 北村 亮典
弁護士 石坂 想
弁護士 川瀬 典宏

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